ご挨拶
ライソゾームやペルオキシソームは、細胞内小器官と呼ばれる細胞内の構造物であり、生命を維持するのに不可欠な様々な機能を持っています。ライソゾームやペルオキシソームの一部の機能が障害されると病気を発症することがあります。それが、ライソゾーム病やペルオキシソーム病です。
科学の進歩、とくに細胞生物学や分子遺伝学の進歩により、ライソゾーム病やペルオキシソーム病の病気の成り立ちが明らかとなってきました。その成果として、一部の疾患では、酵素補充療法などの治療法が開発されています。しかし、多くの疾患では、まだ治療法は開発途上です。遺伝子治療をはじめとする先進的な治療法の開発が期待されます。
一方、治療法が開発された疾患については、病気が進行する前に治療を開始することが重要であることが明らかとなってきました。そこで、重要になるのが、簡便・迅速に疾患の可能性を発症前に明らかにするスクリーニング法の開発とその実践です。
今回、厚生労働科学研究難治性疾患政策研究事業では、複数のライソゾーム病やペルオキシソーム病の診療ガイドラインを作成しています。また、患者さんの状況を把握するために疫学調査を可能にするレジストリー制度の構築を進めています。また、患者さんの良好な予後を確立するため、新生児スクリーニングをはじめとする診断体制の確立を目指します。
ライソゾーム病やペルオキシソーム病は希少疾患であり、個々の疾患の患者数は非常に少なく、一般の人だけでなく、医療関係者にもなじみがある疾患ではありません。これは、研究や診療の改良や向上には不利な状況です。この問題を克服するためには、研究者、医師、患者さん、製薬企業などが一体となって、ライソゾーム病やペルオキシソーム病の研究や臨床を進める必要があります。本研究事業が、ライソゾーム病やペルオキシソーム病の研究や診療の向上に貢献できるように活動していく所存ですので、ご支援をよろしくお願い申し上げます。
2020年6月2日
「ライソゾーム病、ペルオキシソーム病(副腎白質ジストロフィ―を含む)における
良質かつ適切な医療の実現に向けた体制の構築とその実装に関する研究」研究班
主任研究者 奥山 虎之