厚生労働科学研究難治性疾患政策研究事業 ライソゾーム病、ペルオキシソーム病(副腎白質ジストロフィ―を含む)における良質かつ適切な医療の実現に向けた体制の構築とその実装に関する研究

ライソゾーム病とは?(Q & A)患者様向け

1.ライソゾーム病とはどんな病気ですか?

細胞の中には色々な役割をもった細胞内小器官といわれる器官があります。それらには染色体を包んでいる核、エネルギーをつくるミトコンドリアなどがあります。その中で、細胞内でいらなくなったタンパク質、脂肪、糖などを壊す役割をするのがライソゾームと呼ばれている小器官です。要するに細胞内の掃除をする役目を担っています。ライソゾームの中にはタンパク質、脂肪、糖を壊す酵素と呼ばれるタンパク質が多く含まれています。それらは、タンパク質なので設計図は遺伝子です。その設計図である遺伝子に異常があると酵素が正常の働きが出来なくなります。もし、脂肪を壊す酵素の働きが遺伝子の異常でうまく出来なくなると、その脂肪が細胞の中に溜まってきて、結果的に細胞の機能が悪くなってきます。これがライソゾーム病の本体です。ライソゾームには何種類もの酵素があり、それぞれ特定のタンパク質、脂肪、糖などを壊します。現在40種類ぐらいのライソゾームの酵素の異常により発病する病気が知られています。

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

我々が平成13年度に行なった全国調査で各疾患の頻度は以下の通りでした。この調査は、あまり返事を頂けなかったので実際にはもっと多くの患者様がいらっしゃると思います。ただ、疾患の比率は大旨このようなものと思います。

疾患名 疾患名
ゴーシェ病 60 シアリドーシス 11
ニーマンピック病A,B型 1 ガラクトシアリドーシス 16
ニーマンピック病C型 14 I-cell病、ムコリピドーシスⅢ型 24
GM1ガングリオシドーシス 17 α-マンノシドーシス 6
GM2ガングリオシドーシス 18 β-マンノシドーシス 1
クラッベ 15 フコシドーシス 2
異染性脳白質ジストロフィー 17 アスパルチルグルコサミン尿症 0
Multiple sulfatase欠損症 2 シンドラー/神崎病 1
ファーバー病 1 ポンペ病 34
ハーラー/シャイエ症候群 37 ウォルマン病 0
ハンター症候群 115 ダノン病 4
サンフィリッポ症候群 19 遊離シアル酸蓄積症 2
モルキオ症候群 32 セロイドリポフスチノーシス 27
マルトラミー症候群 5 ファブリー病 104
スライ病 9    

3.この病気はどのような人に多いのですか?

ゴーシェ病、GM2ガングリオシドーシス(Tay-Sachs病)、ニーマンピック病A,B型などは東欧のユダヤ人に多い疾患です。その他の疾患は基本的に人種差はありません。Hunter病は基本的に男性に発症します。ファブリー病は両性に発症しますが男性の方が重症な場合が多いです。

4.この病気の原因はわかっているのですか?

殆ど全てのライソゾーム病で欠損している酵素は判明していますし、遺伝子も判明しています。

5.この病気は遺伝するのですか?

全てのライソゾーム病は遺伝性疾患です。基本的に常染色体劣性遺伝といってお母さん、お父さんが病気の因子を半分持っていて、それが合わさると、お子さんが発症します。この確立は25%です。ムコ多糖症II型(ハンター症候群)、ファブリー病、ダノン病は異なる遺伝形式をとります。それはお母さんが病気の因子を半分持っていて、お母さんから男の子に遺伝します。男の子の発症する確立は50%です。女の子の50%は半分だけ、病気の因子をもつことになります。お父さんが病気の場合は男児は正常、女児は全員病気の因子を半分もつことになります。

6.この病気ではどのような症状がおきますか?

疾患によって様々です。ライソゾーム病は全身の病気ですので、神経症状を含め様々な症状が出現します。各疾患についてはライソゾーム病に関して医師向けの項目を見て下さい。

7.この病気にはどのような治療法がありますか?

現在行なわれているは造血幹細胞移植と酵素補充療法です。造血幹細胞移植は現在では、早期もしくは発症前の患者さんに行なわれています。ただ全てのライソゾーム病が治療対象ではありません。酵素補充療法は現在、日本ではゴーシェ病、ファブリー病、ムコ多糖症I型、ムコ多糖症II型、VI型、ポンペ病などに行なわれます。その他の疾患も酵素補充療法の開発が急ピッチで行なわれています。新しい治療法の開発も行なわれています。詳しいことは治療法のところにに載っています。

8.この病気はどういう経過をたどるのですか?

病気によって大きく異なりますので一概には言えません。疾患別の症状はライソゾーム病に関して医師向けのところに記載があります。ただ一般的にライソゾーム病は進行性の疾患で、治療をしなければ時間とともに症状が重くなってゆくことが一般的です。

9.ライソゾーム病と診断されましたが、専門の施設はありますか?

ライソゾーム病を専門としている施設は本研究班の班員が所属している病院です。専門診療施設施設紹介の項目を見て下さい。

10.ライソゾーム病と診断されましたが質問がありますが、どうしたらいいでしょうか?

トップページにある専門診療施設施の担当医師に連絡して下さい。

11.医療費はかかるのですか?

ライソゾーム病は国、地方自治体の医療費助成事業の対象疾患で、大半の医療費は補助されますが、所得に応じていくらかは支払わなくてはなりません。詳しくは居住されている地区の保健所にお問い合わせください。