厚生労働科学研究難治性疾患政策研究事業 ライソゾーム病、ペルオキシソーム病(副腎白質ジストロフィ―を含む)における良質かつ適切な医療の実現に向けた体制の構築とその実装に関する研究

現在行われている治療法ケミカルシャペロン法

H30年度5月末日からファブリ病に対するケミカルシャペロン治療(ガラフォルド)が開始されました。

ケミカルシャペロン療法

本症に対するシャペロン療法は本邦では2018年より導入された。現在、1製剤(製品名:ガラフォルド)がある。ガラフォルドはファブリー病に対する経口剤である。ガラフォルドは国内で発見された低分子量のイミノ酸であり、ファブリー病でライソゾーム内に蓄積するスフィンゴ糖脂質の1つであるグロボトリアオシルセラミド(GL-3)の末端ガラクトースの類似体(アナログ)である。ガラフォルドは1回123mgを隔日経口投与となっている。また、ガラフォルドは反応性のある GLA 遺伝子変異を伴うファブリー病にのみ使用可能であるため、本剤の投与開始に先立って、患者の GLA 遺伝子変異のガラフォルドに対する反応性を確認する必要がある。

ファブリー病では GLA 遺伝子の変異によりα-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)が不安定化し、GL-3などのスフィンゴ糖脂質がライソゾーム内に蓄積する。ガラフォルドはα-Gal Aの薬理学的シャペロンとして作用するため、不安定化したα-Gal Aに小胞体で選択的かつ可逆的に結合する。その結果、ライソゾームへの適切な輸送を促進する。ライソゾーム内では、ガラフォルドが解離することで遊離されたα-Gal Aによって蓄積したGL-3の分解作用を促す。

シャペロン療法の副作用

ガラフォルドの第Ⅲ相試験で主に認められた副作用は、頭痛(10.4%)、下痢(7.8%)、浮動性めまい(5.2%)、悪心(5.2%)、錯感覚(5.2%)である。なお、頭痛が発現した12例中6例がガラフォルドの投薬開始から14日以内に発現した。ほとんどの頭痛が一時的で、重症度は軽度または中等度、投薬治療で管理可能であった。

シャペロン療法のエビデンス

ガラフォルドの第Ⅲ相試験(ATTRACT試験、AT1001-012試験)では、日本人を含む酵素補充療法(ERT)実施中のファブリー病患者を対象に、ガラフォルドの有効性と安全性についてERTとの比較検討がなされた。その結果、主要評価項目であるeGFRCKD-EPI及びmGFRiohexolのベースラインから18 ヵ月までの年間変化量について、ガラフォルドはERTと同等であった。また、ガラフォルドの安全性プロファイルは良好であった。一方、ERT未実施のファブリー病患者を対象に行われた第Ⅲ相試験(FACETS試験、AT1001-011試験)においても、良好な有効性と安全性が示された。これらの臨床試験の結果を踏まえ、ガラフォルドは2016年5月に欧州連合(EU)で初めて承認され、本邦では2018年3月に、米国では8月に承認された。