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ライソゾーム病に関して

異染性白質ジストロフィー;metachromatic leukodystrophy (MLD)

小児の遺伝性白質ジストロフィーとして鑑別すべきリソソーム病としては、異染性白質ジストロフィーとクラッベ病があります。また、小児の白質ジストロフィーとして最も頻度の高いものは、副腎白質ジストロフィーですが、これはペルオキシソームにおける極長鎖脂肪酸の分解異常によって起こるとされています。その他にもいくつかの遺伝性の白質ジストロフィーが知られていますが,その頻度はさほど多くありません。

疾患概念

MLDはリソソーム酵素、アリールサルファターゼAの欠損により脳白質、末梢神経、腎臓などにスルファチドが蓄積し、神経線維の脱髄(髄鞘ないしミエリンが破壊されること)をきたし、中枢、末梢神経障害を来す疾患です。

病型

発症時期により3型に分類されます。

乳児型 2歳までに発症し2‐3年(長くて7年くらい)で死亡することが多い。
若年型 4‐12歳で成績低下、失禁、歩行障害などで発症し、ゆっくり進行する。
成人型 13歳以降に精神症状などで発症し5‐10年の経過で進行する。

典型的乳幼児型の自然歴

4つの時期が分類されています。

第1期 四肢の筋緊張低下、深部腱反射消失を認め、歩行が不安定になってくる。数カ月から1年以上続く。
第2期 歩行不能となり知能障害がはっきりしてきて、構語障害、眼振、下肢の筋緊張亢進などが出現する。数カ月続く。
第3期 四肢麻痺から寝たきりとなり、摂食障害が出現し、発語などはないが笑いなどの表情は残っている。数カ月続く。
第4期 視力障害、聴力障害が進み、外界に対する反応がなくなり、自発運動もなくなる。数カ月から数年間続く。

治療

根本的な治療法として、造血幹細胞移植が行われてきたが、効果は症例によってさまざまであり、移植のリスクと症例の病型,病期などを考慮して慎重に適応を考えるべきである。今までの主たる論文報告に関して、要約したものを下記に示します。

「先天代謝疾患への骨髄移植:結果のレビューと実際的ガイドライン」
2003年Petersら

過去20年で骨髄移植は限られた先天代謝疾患に有効な治療として用いられてきた。移植前の注意深い評価が重要であり、移植後の包括的な効果判定が不可欠である。移植のゴールは移植細胞の生着と長期生存、QOLである。また中枢神経系への効果はドナー由来のマイクログリアによると考えられるが、その入れ替わりには時間がかかり、ALDに対する骨髄移植の効果が見られるのに移植後6‐12ヶ月かかるとされている。
MLDに対する効果は中枢神経症状が進行してしまってからでは難しく、発症前か、日常生活レベルが介助を要しないレベルの場合に推奨される。乳幼児型の場合、早期の診断のもと1歳前に移植すれば有効である。したがって骨髄移植の適応は遅発発症の病型に限りあると考えられる。

「中枢神経症状を伴う疾患への効果的な治療法としてのBMT: Krabbe病、MLD、ALD、マンノシドーシス、フコシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、ハーラー症候群、マルトーラミー症候群、スライ症候群、ゴーシェー病」、1999年Krivitら

400例以上の代謝疾患へのBMTが行われた。そのメカニズムと効果判定についてのレビュー。
骨髄移植により単球・マクロファージ系はドナーのものとなり、これから由来する肝臓のクッパー細胞、伊藤細胞、肺のマクロファージ、皮膚の樹状細胞、脾臓、リンパの組織球などにより、それぞれの組織での治療効果を現すと考えられる。中枢神経系においてはマイクログリア、アストログリアがドナー由来のものと置き換わることにより、脱髄をおこすオリゴデンドロサイトにも酵素活性を伝えることが考えられる。
MLDについては多くの報告があるが、その効果は様々である。発症時期と、病期が重要な移植の予後因子であり、移植前に神経症状の明らかなものは予後は良くない。

GLD, ALD, MLD, Hurlerに対する骨髄移植
Krivitら、1999

それぞれの疾患に対する骨髄移植のプロトコールの違いについて概説。
MLDに対する骨髄移植は50例以上に行われ、多くの望ましい結果を得ている。14年以上フォローした患者において、移植後尿中、髄液中のスルファチドの蓄積が減少し、髄液蛋白は正常化し、MRI画像変化は進行していない。多くの症例において、移植しなかった同胞に比較するとゆっくりした経過を認めている。一番効果的なのは発症年令以前に骨髄移植を行った場合であり、これは移植後マイクログリアが置換するのに約1年はかかることによると考えられる。しかし逆に中枢神経症状が進行した症例においては、移植後も症状の進行が認められ、移植の良い適応ではない。ただ症例によっては神経症状が出た後で移植して有効だった報告もあり、その判断は困難である。

BMT施行したMLD4症例の臨床効果
Malmら、1996

1988から1993年にわたって4症例のMLD患児にBMTを行った。2例の後期乳児型、若年型の症例には自然歴の改善は見られなかった。3例目の若年型は移植時中等度の症状あったが、3年後に粗大運動機能、言語機能を失った。4例目は症状発症前に診断され、18か月時の移植時には軽い歩行障害を認めるのみだったが、移植後脱髄所見が顕在化し臨床症状も2年間に渡り進行している。MLDの移植に関しては後期乳児型は発症前の時期、若年型でも早期が適応と考えられた。

症例 病型 発症時期 診断時期と症状 BMT 経過 最終症状
1 後期乳児型 20Mo 24Mo、軽度 28Mo、中等度 7yr 超重度
2 若年型 7.5yr 8.5yr、軽度 9.5yr、中等度 6yr 6yr3Mo死亡
3 若年型 8yr 8yr、軽度 8.5yr、軽中等度 3yr 中等度
4 後期乳児型 16Mo 13Mo、無症状 18Mo、軽度 2yr 中等度
(症状;軽度:第T期、中等度:第U期、重度:第V期、超重度:第W期)
(症例1)
周産期異常なし、座位7ヶ月、立位8ヶ月だが20ヶ月で独歩不能。24ヶ月診断時、筋力低下、深部腱反射減弱を伴う弛緩性麻痺を認めたが、言語、知能は正常であった。28ヶ月BMT施行時、失調、下肢の痙性麻痺、言語発達の停滞を認めていた(第II期)。移植後6ヶ月で神経学的に急速な進行を認め、発語不能、知能障害が進み、痙性が著明となり嚥下困難を示した(第V期)。9歳時、四肢麻痺、盲、鼻注栄養を要するようになっているが、聴覚、触覚に反応が見られる(第VI期)。
(症例2)
4歳頃に軽度の歩行障害を認めるのみであったが、7歳半で学習障害出現し、歩行障害、健忘、言語障害などが明らかとなってきた。移植時9歳半では介助歩行ができる程度で、発語ができず第2期に至っていた。移植後も進行はすすみ、6歳3ヶ月で死亡している。
(症例4)
兄が同病にて3歳3ヶ月時に死亡し、発症前に診断される。18ヶ月BMT施行時、痙性歩行が始まっていたが失調、知能障害はなかった(第I期)。移植時に粗大運動機能が進行し、歩行不能となる。1年後下肢の痙性は進行し鼻注栄養を要するが、言語、知能面では年令相等であった。2年後運動障害は進行し、独座可能だが下肢の緊張は大変亢進するも、手は使うことができ、知能の発達は停止しており、兄にくらべるとゆっくりとした進行である。
先天性代謝疾患の骨髄移植の長期効果;リソソーム病4症例の研究
今泉ら、1994年

骨髄移植の長期効果につき、I-cell病1例、MLD1例、MPSVI1例、MPSII型1例の4例について検討した。MLD症例は移植時2歳10ヶ月であるが、すでに第3期の初期であり、痙性麻痺ははっきりしており、視神経萎縮、眼振を認めていた。移植後4年経ってもまだ第3期であり、深部腱反射が出るようになっており、神経生検にてミエリン再生像を認めた。移植の効果と考えられる。

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