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治療法

酵素補充療法(現在行われている治療法)

酵素補充療法の原理

多くのライソゾーム加水分解酵素は、末端にマンノース6リン酸(M6P)と呼ばれる糖鎖構造を持ちます。そして細胞内のゴルジ体と細胞表面の膜構造の中には、この糖鎖と結合するマンノース6リン酸受容体が存在し、結合した酵素をライソゾームに運びます。ゴルジ体にあるマンノース6リン酸受容体は、細胞内で新生された加水分解酵素をライソゾームに輸送します。細胞膜表面にあるマンノース6リン酸受容体は、細胞外に存在する加水分解酵素を細胞内にとりこみ、さらにライソゾーム内に輸送するのに役立ちます。酵素補充療法はこの後者の輸送系を利用して、欠損している酵素を薬剤として体外から投与することにより、細胞内に欠損酵素を補充し、ライソゾーム内に蓄積している物質の分解を促進する方法です。

酵素製剤の国内承認状況

欧米ではイミグルセラーゼ(ゴーシェ病:1994年〜)、アガルシダーゼベータ(ファブリー病:2001年〜)、ラロニダーゼ(ムコ多糖症I型:2003年〜)、ガルサルファーゼ(ムコ多糖症VI型:2005年〜)、アルグルコシダーゼアルファ(ポンペ病:2006年4月〜)、イズロサルフェース(ムコ多糖症II型:2006年4月〜)、アガルシダーゼアルファ(ファブリー病)の6疾患7種類のライソゾーム病酵素補充療法製剤が承認されています。
日本ではイミグルセラーゼ(1998年3月〜)とアガルシダーゼベータ(2004年1月〜)が以前から承認され既に使用されており、最近(2006年10月)ラロニダーゼが承認されました。ラロニダーゼの国内開発にあたっては、厚生労働省未承認薬使用問題検討会議での検討を経て、海外の治験データを用いて承認申請を行い、審査期間中に治験を行うという方法で承認に至りました。ガルサルファーゼ、アルグルコシダーゼアルファ、イズロサルフェースについても、同様の対策が講じられて、3製剤とも最近承認されました。

酵素補充療法

上述の酵素製剤を点滴静注にて投与することにより、細胞外から細胞内そしてライソゾーム内に酵素を輸送し、ライソゾーム内に蓄積している物質の分解を促進します。製剤により、1〜2週間に1回、酵素製剤を数時間かけて点滴します。効果に関しては、ゴーシェ病では貧血、血小板減少症、肝脾腫、骨症状の改善、ファブリー病では腎機能、心機能の症状進行の抑制、ムコ多糖症I型では肝脾腫、呼吸機能、歩行試験、関節可動域の改善が認められます。副反応としては、主に投与に関連する反応(発疹、蕁麻疹、発熱、頭痛、嘔気、咳嗽、喘鳴、血圧上昇など)が報告されていますが、重篤なものはほとんどなく、また投与速度の調整や抗ヒスタミン剤、解熱剤、副腎皮質ホルモン剤の適切な使用により、酵素製剤を継続して投与していくことが可能です。しかし、一方で酵素製剤が到達しにくい中枢神経や角膜などへの効果は期待できず、また頻回の点滴治療が生涯必要であり、今後検討すべき課題です。詳しくは各疾患のページをご覧下さい。
酵素補充療法は上述のように臨床症状を改善し、さらにその進行も抑制するとともに、他の根治療法(造血幹細胞移植や遺伝子治療法など)に比べて安全性が高いことが利点です。そのため、早期から治療を開始することが重要であり、早期発見のためのマススクリーニング法の開発や、適切な遺伝カウンセリングの下で行われる遺伝子診断・保因者診断および出生前診断への応用に関する体制作りも整備すべき重要課題です。
酵素補充療法、造血幹細胞治療、遺伝子治療、低分子薬物療法、ケミカルシャペロン療法には、それぞれ長所と欠点があるので、これらの方法を組み合わせた副作用のない適切な治療プロトコールを確立し、将来的には包括的診断、治療システムを作り上げていくことが必要です。

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