2.副腎白質ジストロフィーの研究の現状と研究班の取組

G.造血幹細胞移植

ALDに対する造血幹細胞移植の考え方

本疾患に対する治療としては従来から種々の薬物療法が試みられてきましたが、いずれも無効なため、1980年代前半より本症に対して骨髄移植がなされ、その症状の進行の停止と共に極長鎖脂肪酸の低下が確認されました(文献1、2)。その後、本症に対して多くの移植がなされ、発症早期の移植では症状の改善が見られる事が確認されつつあります。

移植の適応

本症に対する造血幹細胞移植の適応についてはMRIのLoe's scoreが2以上で、神経心理学的検査にてALDと矛盾しない場合は移植適応ありとされますが、すでに神経症状が進行して視力、聴力、発語、歩行等に異常が認められる場合はMRI のscoreも11以上である事が多く、また移植後の神経学的改善も期待できず、死亡率も高いため、移植適応はないとされます(文献3)。

移植方法

本症に対する移植は、大量化学療法に引き続き、ドナーの造血幹細胞(骨髄や臍帯血)を投与します。前処置薬としてはブスルファン、エンドキサン、抗リンパ球グロブリン(ATG)等を用い、移植後のGVHD(移植片対宿主病)の予防のためにメソトレキセートやサイクロスポリンA等の免疫抑制剤を用います。またドナーと患者はHLAが一致していることが望ましいのですが、患者とドナーがHLA不一致の場合は急性GVHDが重症化する事が多く、その際には強力な免疫抑制剤を用います。また移植後、白血球数が上昇するまでは無菌管理が必要となり、他の移植後の合併症としては生着不全、感染症、肝障害、腎障害、痙攣等があります。

ALD研究班による調査結果

厚生労働省の班研究でまとめられた初回移植18例中16例に生着が得られ、発症後に移植された14例では移植後に1例で改善、2例が不変、11例で悪化もしくは死亡であったのに対し、無症状期に移植された4例では移植後も無症状でした。

また移植ドナー別でみた場合、発症から移植までの期間及び診断から移植までの期間は血縁者間移植の方が非血縁者間移植の場合より短かく、発症後移植例での症状の改善もしくは進行停止例はすべて同胞間移植でした(文献4)。

移植の問題点

発症から移植までの期間とドナーの有無:本症は初発症状が不定愁訴に似ているため診断までに時間を要し、また診断されても血縁者にドナーが得られない場合は骨髄移植推進財団に登録しますが、移植までに約6ヶ月間を要し、その間に症状が進行する例があります。

前処置薬:これまでの移植前処置薬としてはブスルファンを用いる事が多かったのですが、この薬剤の中枢神経系への移行がよいため、神経症状が急速に進行する例がみられます。そのため他の薬剤への変更が期待されますが、生着が確実に得られる前処置は未確定です。

生着不全:本症に限らず非腫瘍性疾患は生着不全比率が高く、再移植が必要な例もあります。また臍帯血移植では特に生着不全の頻度が高いため、前項と同様な理由で適切な前処置薬の選択が重要です。
(加藤剛二、名古屋第一赤十字病院小児血液腫瘍科)
(加藤俊一、東海大学医学部基盤診療学系再生医療科学)

文献

  1. Moser HW, Tutschka PJ, Brown III FR, et al, Bone marrow transplant in adrenoleukodystrophy. Neurology 34: 1410-1417, 1984
  2. Aubourg PB, Blanche S, Jambaque I, et al, Reversal of early neurologic and neuroradiologic manifestations of X-linked adrenoleukodystrophy by bone marrow transplantation. New Engl J Med 322: 186-1866, 1990
  3. Krivit W, Lockman LA, Watkins PA, et al, The future for treatment by bone marrow transplantation for adrenoleukodystrophy, metachromatic leukodystrophy, globoid cell leukodystrophy and Hurler syndrome. J Inher Metab Dis 18: 398-412, 1995
  4. 4. 辻 省次 国内における副腎白質ジストロフィー症に対する造血幹細胞移植成績、厚生科学研究費補助金 厚生省特定疾患対策研究事業 副腎白質ジストロフィーの治療法開発のための臨床的及び基礎的研究班 平成11年度研究報告書
  5. 5. Peters C, Charnas LR, Tan Y, Ziegler RS, Shapiro EG, DeFor T, Grewal SS, Orchard PJ, Abel SL, Goldman AI, Ramsay NK, Dusenbery KE, Loes DJ, Lockman LA, Kato S, Aubourg PR, Moser HW, Krivit W.: Cerebral X-linked adrenoleukodystrophy: the international hematopoietic cell transplantation experience from 1982 to 1999. Blood. 2004;104:881-8.