2.副腎白質ジストロフィーの研究の現状と研究班の取組

F.ALDのMRI画像

MRI は本症の診断、病気の勢いの判断に有用な検査方法です。MRIでは脱髄が起きたところがよく解ります.また造影剤を使うと,病気の進行の早さを知る参考になると言われています.一般に ,茲造影される 病変が広い 錐体路に及んでいる時は病気のすすみ具合が速いと考えられます。

本症のMRIはLoes scoreという方法でスコアー化され、治療の評価にも使われます(1)。Loes scoreはALDでよく侵される34箇所の場所に関して、変化があるかどうかを加点する総点数 34 点の簡便なスコアリング法です(図1)。スコア方法の詳細については主治医の先生を通じて、新潟大学の小野寺にお問い合わせ下さい。MRI上の異常を多く伴うほど高得点となり、神経心理学検査の重症度ともよく相関することが知られています。

Moserらの多数例での報告では、初診時のLoes scorが3点以上の方では、年齢を問わず70〜80%の方で症状の進行します。特に問題となるのが3歳から10歳で病気になった男の子で、進行も早く死亡率も高いことが知られています。一方10%の症例では、症状の進行が自然に停止すると報告されています。3歳未満の群では、症状が出たり、MRI上の変化を認めた報告はありません。3〜7歳未満では30%が、7〜10歳以下では10%が大脳型になると推定されています。青年期から成人期で大脳型になるのは約6〜12%と言われています。

Loes score は視覚路(見る)・聴覚路(聞く)に関する部位について非常に細かく設定されています。聴覚路の下丘腕、外側毛帯には、特徴的な異常所見が認められることがあり、診断に役立ちます(図2)(1)。その場所は、背髄液に接しているため判定にはFLAIR法という撮影法が有用です。

侵されやすい場所としては後頭葉白質(後ろの方です)から前に進む例が一般的ですが10%程度では前頭葉(前の方です)から後ろに進む例があります。また錐体路(手や足に動く命令を伝えるところです)に一致して内包・大脳脚から変化が進む例や、脳梁膨大部(右と左の脳をつなぐところです)から進む例も特徴的です。多くは左右対称ですが、時に非対称性に進行することもあり、画像上、脳腫瘍との鑑別が問題になる例もあります。

造影剤(Gd-DPTA)によりT1強調画像で認められる低吸収域(黒く見えます)の周りが白く線状に認められることがあります(造影効果)。造影効果を認める症例では急速に進行することが多く、病気の勢いの判断に有効です。

3歳から12歳の、小児大脳型好発年齢にあたる未発症男児に対しては、最低6ヶ月に1回のMRI検査が必要でしょう。大脳型への進展が示唆された場合は、早めの造血幹細胞移植を検討する必要があります(2)。造血幹細胞移植後もゆっくりとLoes score は悪化しますが、造影効果は早期に消失します。Loes score の悪化は造血幹細胞移植後,約1.5年で認められなくなります。造血幹細胞移植が行われなかった例に比べて,Loes scoreは低く保たれています.
(小野寺 理、新潟大学脳研究所附属生命科学リソース研究センター)

文献

  1. Loes DJ, Hite S, Moser H, Stillman AE, Shapiro E, Lockman L, et al. Adrenoleukodystrophy: a scoring method for brain MR observations. AJNR Am J Neuroradiol 1994;15(9):1761-1766.
  2. Moser HW, Smith KD, Watkins PA, Powers J, Moser AB. X-linked adrenoleukodystrophy. In: Scriver CR, Beaudet AL, Sly WS, Valle D, eds. The Metabolic & Molecular Bases of Inherited Disease. eighth ed. New York: McGraw-Hill, 2001: 3257-3302
表1 Loes score法 表1 Loes score法 図1 特徴的なMRI所見(FLAIR画像)
  • A)外側膝状体(白矢印)、視放線(黒矢印)
  • B)内側膝状体(白矢印)、Myersループ(黒矢印)
  • C)内包
  • D)下丘腕
  • E)外側網体
  • F)台形体(trapezoid body)
これらの病変を見極めるのにFLAIR像は有用である。 FLAIR画像