2.副腎白質ジストロフィーの研究の現状と研究班の取組

C.ALD遺伝子

ALDの原因遺伝子

ALDの原因となっている変異は、ALDP (ALDタンパク質)あるいはABCD1と名付けられたタンパク質をコードしている「X-ALD遺伝子(あるいはALDP遺伝子と呼ばれます)」に生じたものであることが、家系調査をもとに明らかになりました(文献1)。この遺伝子はX染色上にあるため、X連鎖劣性遺伝の様式をとり、母親から子へと伝えられます。男性のもつX染色体は全て母親に由来するので、片方のX-ALD遺伝子に変異を持つ母親(保因者)から生まれた男の子の50%は変異X-ALD遺伝子を受け継ぐことになります。女の子は母親と父親からひとつずつX染色体を受け継ぐので、50%の確率で「正常なX-ALD遺伝子を2つもつ場合」と「正常なX-ALD遺伝子と変異X-ALD遺伝子をひとつずつもつ場合(保因者)」に分かれます。

ALDPの特性と機能

ALDPはABCトランスポーターと呼ばれるタンパク質ファミリーに属するタンパク質のひとつで、アミノ酸745個からできています。ALDPはペルオキシソームと呼ばれる細胞小器官の膜に局在しており、ペルオキシソームへの物質の出入りに関与しているものと考えられています。ALDPに変異が生じると、極長鎖脂肪酸がペルオキシソームに取り込まれなくなるため、極長鎖脂肪酸が分解されずに貯まってしまうのではないか、といわれていますが、はっきりしたことはわかっていません。ALDPによく似たタンパク質として、ALDRP、PMP70、P70Rがあり、ALDRPは変異ALDPの機能を補えることが示されています。

X-ALD遺伝子の変異

X-ALD患者ゲノムを解析した結果、X-ALD遺伝子の変異は様々な箇所に見いだされ、特定の領域に集中するということはありませんでした。変異の約半分はアミノ酸が別のアミノ酸に置き換わったタイプのもので、後の50%は部分欠損したタンパク質ができるというタイプのものでした。X-ALDにはいくつかの異なる症状が知られていますが、特定の変異と症状との対応関係も見つかっていません。同じ変異X-ALD遺伝子を持つ家系でも症状に違いが見られることから、X-ALD遺伝子の変異以外にALDの症状に影響を与える要因があるのではないかと推測されていますが、具体的な要因は特定できていません。「X-ALD遺伝子の変異が、どのような仕組みでALDの発症につながるのか」、を明らかにすることは、新たな治療法を開発するために是非とも解決しなければならない課題となっています。 (橋本有弘、国立長寿医療センター研究所再生再建医学研究部)

文献

  1. Mosser J, Douar A-M, Sarde C-O, Kioschis P, Feil R, Moser, H, Poustka A-M, Mndel J-L and Aubourg P Putative X-linked adrenolwukodystrophy gene share unexpected homology with ABC transporters. Nature, 361, 726-730 (1993).