2.副腎白質ジストロフィーの研究の現状と研究班の取組

A.ALDの疫学

ALD全体の発症頻度

報告によって男子2万人〜20万人に1名と大きな幅がありますが、 Moserらは米国における男性患者と女性保因者を合わせた頻度は1/18,000人と試算しています。 これは単独の先天代謝異常症としてはかなり高い頻度であることになります。 米国におsけるフェニルケトン尿症の頻度は1/12,000人ですから、 それに近い頻度となります。またフランスの患者頻度は1/22,500人と報告されています。

日本における頻度については本研究班が1990年〜1999年の10年間について全国調査を行い、 1/30,000〜50,000人であろうと推計を出しました。これは後方視的なアンケート調査ですので、 まだ漏れがあると考えられ、おそらく欧米と大差ない発症頻度であろうと推測されます。

病型別の発症頻度

欧米のデータでは小児型31〜40%、思春期型5%前後、 AMN 25〜46%、成人大脳型2〜16%、Addison病のみ6〜14%、 無症状(発症前)4〜10%と報告されています。 国によって差が見られ、フランス・オランダではAMNが多く、スペインでは成人大脳型が16%と多く認められます。

日本における調査では小児型29.9%、思春期型9.1%、 AMN25.3%、成人大脳型21.4%、小脳・脳幹型8.4%、発症前4.5%という結果でした。 欧米に比べ成人大脳型が多く、小脳脳幹型も日本の特徴と言えます。 また本邦における過去のデータでは小児患者が約2/3を占めていましたが、 今回の調査では小児患者と成人患者の比率はほぼ欧米と近似しています。

ALD研究班による全国疫学調査結果について

発症年齢:小児型の平均は約7歳で、小学校低学年に発病ピークがあります。最も早い発症は2歳でした。AMN 30.2歳、成人大脳型36.8歳、小脳・脳幹型38.0歳でした。成人の発病ピークは20代後半から30代前半です。

発病から診断までの期間:小児型は発病後平均0.9年で診断されていますが、骨髄移植を受けるにはすでに遅いと考えられます。成人例では診断までに数年を要する例も多くみられます。

初発症状:小児型では知的退行・視力障害が最も多く、次いで精神症状・歩行障害・聴力障害となっています。思春期では視力・歩行障害が多く認められます。AMNと小脳・脳幹型では、当然のことですが、歩行障害が圧倒的に多く認められました。成人大脳型では精神症状が最も多い初発症状です。

経過:小児型は2年以内に嚥下障害・寝たきりとなりますが、特に7歳以下で発症した場合の進行は早いようです。AMNは一般にゆっくりした経過で知的レベルが保たれるとされていますが、約半数は発病後10年以上経過すると大脳症状を合併してくるようです。小脳・脳幹型も約半数例が大脳症状を合併します。

家族歴:ALDでは同一家系内でも異なる臨床病型の患者が発生します。兄弟間で異なる病型を示したのは25%、おじ甥間では67%でした。
(鈴木康之、岐阜大学医学部医学教育開発研究センター)

文献

  1. Takemoto Y, Suzuki Y, Shimozawa N, Tamakoshi A, Onodera O, Tsuji S, Kondo N. Epidemiology of X-linked adrenoleukodystrophy in Japan. J Hum Genet 47, 590-593 (2002)
  2. Moser HW, Smith KD, Watkins PA, Powers J, Moser AB (2001) X-linked Adrenoleukodystrophy. In: Scriver CR, Beaudet AL, Sly WS, Valle D eds. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. 8th ed. Vol. 2 New York: McGraw-Hill, 3257-3301
  3. van Geel BM, Assies J, Weverling GJ, Barth PG (1994) Predominance of the adrenomyeloneuropathy phenotype of X-linked adrenoleukodystrophy in the Netherlands: a survey of 30 kind reds. Neurology 44:2343-2346
  4. Ruiz M, Coll MJ, Pampols T, Giros M (1998) X-linked adrenoleukodystrophy: phenotype distribution and expression of ALDP in Spanish kind reds. Am J Med Genet 76:424-427
日本におけるALDの疫学(1990〜1999)
病型 発症年齢(範囲) 発症〜診断
小児 29.9% 7.1(2-10歳) 0.9年
思春期 9.1 14.7 (11-19) 1.6
AMN 25.3 30.2 (13-51) 5.8
成人大脳 21.4 36.8 (21-58) 3.2
小脳脳幹 8.4 38.0 (17-52) 5.4
ALD全体の発症頻度